音楽プロデューサー、ドミトロ・ゴードン氏インタビュー②
「Dimash News」記事 2024年4月26日付
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注意書き
・これは2024年4月26日、「Dimash News」に掲載された、音楽プロデューサー、ドミトロ・ゴードン氏のインタビューで、今年(2024年)4月に発表されたディマシュの曲『SMOKE』の制作秘話です。
・記事の自動翻訳などを参考に、読みやすい日本語に翻訳し直しました。
・各章の「見出し」は、「目次」のために内容を考慮して独自に作成したものです。
・これは「ディマシュ・ジャパンFC」専用記事です。
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★音楽のみのYouTube動画:『Smoke』
by Dimash Qudaibergen – トピック 2024/04/25
Provided to YouTube by The state51 Conspiracy
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YouTube動画:『Dimash Qudaibergen – ‘SMOKE’ (PERFORMANCE VIDEO)』
By Dimash Qudaibergen(公式) 2024/04/27
新曲『SMOKE』リリース
4月26日、ディマシュ・クダイベルゲンの新曲『SMOKE』が、世界のミュージック・プラットフォームでリリースされた。
この新作の作曲者はディマシュ自身であり、作詞者はキャンディス・ケリー、そしてドミトロ・ゴードンとの共著である。
ディマシュは、音楽には国境も国籍も距離もないと、繰り返し語ってきた。今回の新作は、この真実を改めて裏付けている。
作品『SMOKE』は、2カ月前にリリースされた『When I’ve Got You』と同様、カザフスタンの作曲家ディマシュ・クダイベルゲンと、作詞者キャンディス・ケリー、そして米国の音楽プロデューサー、ドミトロ・ゴードンとの共同作品である。
新曲のプレミア公開当日、DimashNews編集スタッフは、新曲とディマシュ・クダイベルゲンとのコラボレーションについて、ドミトロ・ゴードンに話を聞いた。
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ドミトロが語る、ディマシュについて
Dimash News:
ドミトロさん、あなたは8年間、ウォルター・アファナシエフの会社「ウォーリー・ワールド」でリード・オーケストレーターおよび編曲家として一緒に仕事をしてきました。また、お2人は映画音楽も手掛けていらっしゃいます。
米国の有名アーティストの音楽制作と、ディマシュとの仕事の類似点は何ですか? また、違いは何ですか?
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ドミトロ:
ディマシュは、僕がこれまで一緒に仕事をしたどのアーティストよりも「実験」に対してオープンな人物だと言えるだろうね。
既存のファンベースを持っている確立されたアーティストの場合、彼らとそのレーベルは通常、新しいスタイルや新しい歌唱テクニック、またはコアな聴衆を混乱させたり怖がらせたりする可能性のある音楽を試すことに関して、非常に慎重になるものだ。
それは当然のことなのだけど、この場合の問題は、しばらくするとレパートリーが停滞してしまうということなんだ。
ディマシュは、僕が知る限り、今日の世界で最も勇敢なアーティストだ。
彼はdearsを尊敬し、深く気にかけているけれど、同時に新しいことに挑戦することを恐れていない。最新作を含めて、今までに何度もそれを証明しているね。
個人的なレベルでも、僕たちのコラボレーションは友情にも発展したんだ。僕はそれについて永遠に感謝するだろうな。ただの共同制作者としてではなく、友達として音楽を作るほうがずっと純粋で楽しいものだからね。
ビートルズに聞いてきたらいいよ。
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ドミトロから見た、ディマシュの音楽活動の軌跡
Dimash News:
あなたは2017年にディマシュと出会い、2023年に運命的な再会を果たしました。
この数年間、カザフスタンのミュージシャンの創作活動を追いかけてきましたか? どの曲を一番覚えていますか? あなたの感覚に最も合っているのはどの曲ですか?
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ドミトロ:
もちろん、この6年間、彼の歩みを興味深く見守ってきたよ!
「ワールズ・ベスト」(*1)への参加、『Akkuym(My Swan)』と『Across Endless Dimensions』のミュージックビデオの初公開、イーゴル・クルトイとのコラボレーションを覚えている。
(*1:‟The World’s Best”は、2019年米CBSのスター発掘番組。ディマシュは7週目のチャンピオン・ラウンドで「子供と競うことは出来ない」という理由により棄権したことで有名)
彼のビデオは、さまざまな場所(プラットフォーム)に登場し続け、そのたびに僕は彼の常識はずれな才能に完全に圧倒されてきた。
しかし、それ以上に印象的だったのは、アーティストとして、ミュージシャンとしてのディマシュの成長だよ。
僕の心に特別な位置を占める曲が3曲ある。
『SOS』。
この曲を僕が最初に聴いたのは、2017 年にウォルターと僕が彼に会ったその日だったんだ。
『ストレンジャー』。
彼の歌唱能力の観点で、最も印象的な曲だった。
そして、
『The story of one sky』。
僕の絶対的なお気に入りだ。これはディマシュの作曲家としての才能に光を当て、彼が深い思想家であり、真の人間であることを明らかにした曲だ。
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作曲課程:最初期/サウンドの探索/ヴォカリーズ/ドンブラの登場/歌詞、録音など
Dimash News:
新曲の制作はどのようにして始まったのですか? 新曲「Smoke」を例に、何が起こったのか教えてください。 最初のアイデアから最終的な段階まで。
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ドミトロ:
僕たちはウォルター・アファナシエフのスタジオで出会い、自然と意気投合した。
ディマシュは新しい音楽のアイデアをいくつか持っていて、それを試してみたかったんだ。
そのアイデアは僕の心にも共鳴した。
この件に対する僕の意見には、彼も共感したのではないかと思うよ。
ディマシュはすでにヴァースのボーカル・メロディーを持っていた。
彼はそれをリアルタイムで僕に歌ってくれたので、僕はそれをサポートするのに最適なサウンドを探すことにした。
僕たちはその前に、このトラックがエレクトロニックでモダンである必要があり、彼がこれまでに作ってきた美しいクロスオーバーとは異なるものである必要がある、と話し合っていた。
また、どの言語で歌うかには関係なく、言葉のないメロディーなら誰でも口ずさむことができるため、ヴォカリーズ(*2)がいかに強力なツールであるかについても話し合った。
そこで彼は、コーラス用のヴォカリーズを意図的に選択し、今僕たちが聴いているあの美しく幅広いメロディーを生み出したんだ。
(*2:ヴォカリーズ-vocaliseフランス語-は、歌詞を伴わず、母音のみで歌う歌唱法。英語ではヴォーカリゼーション。ここではコーラス部分のディマシュによるソプラノ歌唱を言っている)
最初のセッションから2、3日が経った頃だったと思う。
僕はこれらのアイデアを家に持ち帰って、アレンジを少し検討し、他のシンセパート、ハーモニー、そして全体的な音色のデザインを考え始めた。
次に会った時、ディマシュのためにそれを演奏したんだ。
そうしたら彼は僕に、もう1回それを弾いてくれ、もう一回、って僕に頼むんだ。
2人ともこの曲にすっかりハマってしまったんだよ!
それはほとんど催眠術にかかったみたいで、本物のイヤーワームのように耳の中でずっと鳴っていたんだ。
その日、僕たちは作曲にさらにいくつかの要素を追加した。
それから、ディマシュが、自分にはドンブラのパートが曲の中で聞こえているので、それを試してみたい、と言い出した。
「LAにドンブラを持って来たのかい?」
僕が尋ねると、彼はこう答えたんだ。
「本物のカザフ人なら、家にドンブラがなくちゃいけないんだよ」
そういうわけで、彼は次の機会にドンブラをスタジオに持ってきて、そのパートを作曲したんだ。
次のセッションにはキャンディスを招いて、彼女に曲のデモを聴いてもらった。
キャンディスは歌詞を作り始めたが、ディマシュはカザフスタンに戻らなければならなかったので、大陸を越えて作業が続けられた。
歌詞が承認された後、ディマシュは自分のボーカルを録音して僕に送ってくれた。
僕は制作を完了して、ミキシングとマスタリングの作業のために送り出すことができた。
それはロンドンで行われることになっていたんだ。
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『Smoke』と『When I’ve Got You』の違い
Dimash News:
『Smoke』と『When I’ve Got You』は、異なるスタイルの2つの作品で、作曲家として、そして演奏家としてのディマシュの新たな「おいしい」ディテールが盛り込まれています。
アーティストのファンはあらゆる音楽フレーズを捉え、味わいました。
この2曲とそれらの作業は、あなたにとってどこが似ていて、どこが違っているのでしょう?
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ドミトロ:
音楽と作業プロセスの両方の点で、それらは完全に異なっているよ。
唯一の共通点は、それがディマシュであること、そして同じミュージシャンのチームによって作成されたという事実だけだね。
『When I’ve Got You』は、作曲の面でも、プロダクションの面でも、より伝統的な曲だ。
これは現代的な曲ではあるが、ブルース、ジャズ、R&B、ロックといった20世紀の人気ジャンルに敬意を表しているんだ。
また、ヴォーカル・メロディのメリズマ(*3)、ハーモニーの緊張感、分厚いテクスチャー、全体的にマキシマリスト(注:好きなものに取り囲まれていること、ミニマリストの反対)なプロダクションなど、非常にロマンティックな内容となっている。
(*3:メリズマまたはメリスマ-melisma-は、古代ギリシャ語で「歌」をあらわし、歌詞の1音節に対して複数の音符を当てはめて装飾的に歌う技法。短い時間内で連続して音階を高速変化させること。マライア・キャリーが多用して有名。この曲では、コーラス部の「If I ever knew in my life」の knew や life などの歌い方を指している)
一方で、『SMOKE』はその正反対だ。
完全に現代的であり、ある面では実験的ですらあるんだ。
確かに、コーラスにはオペラ的なヴォカリーズが含まれているけれど、僕たちがそれを聞く状況を考えると、それを特定のジャンルの枠に入れることは不可能なんだ。
また、ボーカルのメロディー、ハーモニーの内容、楽器のテクスチャーに関してもミニマルでオープンだ(ただしそう単純なものではなく、ディマシュのユニークなボーカル能力は依然として輝いているけれどね)。
『SMOKE』の中で音楽的に決定されていることは、すべて超精密なんだ。
何か1つを取り除いてしまうと、曲がバラバラになってしまう。
かといって何か1つの要素を追加すると、過度に飽和状態になってしまうんだ。
説明するとしたら、そういう感じかな。
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作詞者、キャンディス・ケリーについて
Dimash News:
『SMOKE』と『When I’ve Got You』の歌詞の作者はキャンディス・ケリーですが、あなたは彼女と以前から一緒に仕事をしています。
あなたは「オンリー・セインツ Only Saints」プロジェクトに関係していますね。あなたたちが一緒に取り組んだプロジェクトはどのくらいあるのですか?
ディマシュの共同作品の曲はどうでしたか?
音楽制作では歌詞を「微調整」する必要がありますか、それともその逆ですか?
フレームワーク(枠組み)はどうだったのでしょうか?
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ドミトロ:
キャンディスとは2021年から知り合いなんだ。僕たちは共通の友人であり協力者でもあるアンソニー・ペピを通じて知り合った。主に映像メディア向けの音楽に焦点を当てた映画ポップ・ライター・チームとして「オンリー・セインツ」を創設した。これまで一緒に25曲以上を作ってきたと思う。
★dmytrogordon(ドミトロ・ゴードン氏)のIGより 2023年11月4日
Only Saints:Our Favorite Tree (feat. Candice Kelly, Anthony Pepi, Dymtro Gordon
(インスタグラムに飛んで、見て下さい)
(歌っているのがキャンディスさん、ピアノがアンソニー・ペピさん、途中カメラがパンすると、キーボードを弾いているドミトロさんが映ります)
正直に言うと、キャンディスは僕が知っている最高の作詞家のひとりなので、当然のことだけど、僕は彼女を新曲の(作詞家の)候補者としてディマシュに提案したんだ。
最初のミーティングの時から、2人はとても意気投合していた。
キャンディスが『When I’ve Got You』の最初の草稿を作成した時には、ディマシュも僕も彼女が最適であると完璧に確信していた。
彼女は信じられないほど才能のある作家であることに加えて、非常に柔軟で、迅速で、仕事がしやすい人でもあるんだ。
作詞家が曲の中で言葉によって伝えようとしている内容について、最善の判断を下している場合であるにもかかわらず、音楽の一貫性が損なわれる可能性がある。言葉が多すぎるとメロディーが歌いにくくなり、音節が足りないと盛り上がりに欠けて、アーティキュレーション(*4)も明確ではなくなってしまう。
(*4:アーティキュレーション-Articulation-は、音と音のつながりの部分に強弱や表情などをつけるための音楽の演奏技法を言う。表現方法を指定した記号を言う場合もある。スラー、テヌート、スタッカート、など。)
キャンディスは、曲のすべての音楽要素と、それらがどのようにうまく共存しているかを監督する立場として、僕の意見を快く受け入れてくれた。
ディマシュが作成したメロディーが最高のポテンシャルを発揮していることを確認するために、またその曲がリスナーにとって可能な限り耳に優しいものであることを保証するために、いくつかの単語やフレーズを変更する必要があったんだ。
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制作されたバージョンの数と、制作に費やした時間
Dimash News:
数年前の記者会見で、ディマシュは新曲のタイトルを尋ねられ、「バージョン番号578」と答えていました。制作プロセスでは、『SMOKE』と『When I’ve Got You』の条件付きバージョンが何個かあったのですか?
それとも、それは終わりのないとても楽しいプロセスなので、中断したくないからでしょうか?
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ドミトロ:
それ(ディマシュの答え)は、面白いね!
非常に共感できるよ……音楽は呼吸する有機体であり、作業中にも進化し続けるため、バージョンの数を正確に数えるのは不可能なんだ。
ただし、(イギリスのスタジオへ)輸出されたデモ・バージョンの数はわかるよ。
通常、各バージョン間の「違い」は最小限だが、漸進的だ。
『When I’ve Got You』は10個が輸出され、さらにミックスは4つのバージョンが輸出された。
そして『SMOKE』は14個が輸出され、ミックスは10バージョンだった。
興味深いことに『SMOKE』は、自分としては、『When I’ve Got You』よりも制作に2倍以上の時間がかかっている。
楽器の数は『When I’ve Got You』よりもはるかに少ないのに、すべてが前面かつ中心にあるため、制作上のあらゆる選択の重要度が2倍になり、より多くの集中力、正確さ、努力が必要になった。
また、電子楽器は通常、作業に時間がかかるため、各サウンドをトラックに合わせて調整するのに多大な時間を費やしてしまった。
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これからの予定は!?
Dimash News:
キャンディスとディマシュとの共同作業が素晴らしい結果をもたらしたことに、疑いの余地はありません。世界のさまざまな国にいるディマシュのファンは、新しい曲を完璧に受け入れました。
このような才能ある「仲間達」が、さらに新しい作品を発表する予定はありますか?
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ドミトロ:
温かいお言葉を、ありがとう!
人類最高の音楽家のひとりだ、と僕が心から思っているディマシュと一緒に仕事ができるのは、本当に光栄で、信じられないほどの特権なんだ。
そして、彼のファンの皆さんから愛と感謝の言葉をいだだけることは、まさに天国にいるような気分だよ。
これらの新しい作品をサポートして下さって、ディマシュの未知の新しい側面に向かって心と耳を開くために、僕たちと一緒にリスクを背負ってくれたすべての人に、僕はとても感謝しています。
新作に関しては、まだサプライズをネタバレしたくないな。
だけど、典型的な言葉を引用するとね、こんな感じかな。
「このあとすぐ!( Soon!)」
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テキスト:「Dimash News」
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(終了)
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